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エレファントピア

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ミャンマーお祭り紀行

ミャンマーお祭り紀行


第一回:イエッタースエボエ

ミャンマーはラカイン族のお祭り。

マウンドーというところは、北西部にあるラカイン州のバングラとの国境に位置する町で、いやに僻地で、雨季に雨雨で…と前も書きましたが、もう一つの特徴が、このマウンドーを囲む地域(ラカイン州の一部)の9割の住民がムスリム人であり、あとの1割がラカイン人であるということ。
ミャンマー「国民」として認められていない多数派バのムスリム人と、一応「国民」かつ「先住民」を主張する少数派ラカイン人というアンバランスな人口構造を持つ地域です。

さて、そんなControversialな町を今年2月に訪れた時のこと。
マウンドーでは激しい雨季を過ごし、また多忙な農繁期が終わり、ちょうど乾季が始まった頃でした。乾季といえば、農閑期のお祭りシーズン。住民たちは、ラカイン人もムスリム人も、忙しく、心なしか浮き足立っているようにも見えました。


滞在3日目の夜、団体の女性スタッフたちに連れられてラカインのお祭り「イエッタースエボエ」に出かけました。

このお祭りは仏陀の母の死体を2つの国が奪い合い引っ張り合ったという故事を祝ったもの。(結局死体はちぎれたというもの…)

女性陣と男性陣に別れて綱引きを行います。それぞれの方向に100メートルはある綱の中央には台車の上に何かの木が載せられていて、この台車を「イエッター」と呼び、「スエ」は引く、「ボエ」は祭りという意味。

祭りを見に行くと、なんだかお偉いさんたちの座る席が設えてあって、外国人に何かあったら大変!と、早速そこに収容されてしまった。軍人さんたちとにこやかに握手をかわす。ミンシュシュギバンザーイ!

そして、とても長く、かなり長く、偉い人たちの演説や主催者側からの注意事項などが壇上でとうとうと語られます。
そんな中祭りに来る人たちはどんどん増えます。屋台も(ほとんど)ないけれど、人の熱気だけはむんむん。

演説が終ると、今度はラカインの民族衣装を着た楽隊の演奏。それから綺麗どころの踊り。ううむ。やはり女の子たちの踊りを見ないことには始まれないのか…。でもかわいかった~(^^)

そして「火祭り」(=空中灯篭流し)のようにジャンボビニール風船の中に火をつけて飛ばそうとします。(要は、気球)
んがっ、風が強くて火がなかなか付かず、付いたと思ったら風に飛ばされてものすごく近くて低い電線にひっかっかってあえなく挫折。
っていうか火事にならなくてよかったよ~~お偉いさんの前で。

↑このとき私たち(日本人とラカイン人の有能女性スタッフ)は、その辺をうろうろしていたので、パトロールの人にこっぴどく怒られました。まあ、外国人が怪我でもしたら、主催者側の責任重大だろうからねえ。お偉いさんの前で。


が、しかし!
こんなことでひるむ私(たち)ではなありません。
とうとう綱引きが開始された!と見るや、パトロールの人の目をかいくぐって女性陣に参戦!団体の女性スタッフたちに合流しました。

が、しかし!
まず、綱を掴む場所を確保するのが大変!
皆ノリノリで綱をがっちりにぎっています。私たちが参戦した時には女性陣だけで300人以上いた?目の前にはちびっこたち。うしろには背中が曲がった白髪のおばあさん。(オイオイ…)若いおねえさんも、おっかさんも、おばあちゃんも、号令がかかると一斉に、

「スエー!スエー!」と声を限りに叫んで綱を引っ張る!
辺りにはもうもうと埃が立ちこめて、視界が真っ白になる。履いていたサンダルが邪魔で、途中で放り出して引っ張る!

しかし!
全然勝負が決まらない~

私たちが参戦したのは多分2回戦だったのだが、1回戦は男性陣が勝っていた。
これってもしかしなくても、主催者に勝敗がコントロールされてないか??力の弱い(さらに男性陣のテンションに追いつけない)女性陣を勝たせるために、台車の上で、「あ~ちょっとまって!」とか、「ストップ!やり直し!」とか叫んでいる。
ありがとう主催者!あんまり勝負の意味ないけど!

そして声をからして引いて引いて、
(結局私は弾き飛ばされ、途中から声のみの参戦。情けなか~(TT)
とうとう勝った~~!!

足も身体も髪も埃だらけ。掌は赤剥け。声はガラガラになったけど、楽しかった~~!!こんなに声を張り上げたのって、何年ぶりだろう?


そして!この綱引きの醍醐味は、勝った側は負けた側に、ステージの上から悪口を言う事ができる!!
最初の勝負では男性陣に負けて、

「はぁ~いや~♪お前ら女達!
今日はせっかくイエッタースエボエに誘ったのに~
なぜにお前は来なかった~
そんなにめかしこみやがって~
どうせ今ごろ、どっかのだれかと~
どっかにしけこんでるんだろう~~♪」

と、唄われてしまった!

今度は女性陣の逆襲。

「はぁ~いぇ~♪あんたたち男たち!
オレは忙しいなんて言うけれど~
いっつも飲んだくれてるか~
ばくちを打ったりするばかり~♪
ちょっとはちゃんと働いたらどうなの!」

と、拍子をつけて、ミャンマ~らし~い、のんきな歌声で相手をののしります。その間、言われている方は、言い返したりしてはいけない。甘んじて聞きうけるのみ。
でもこれって考えてみれば、誰かが最初から考えてくるんだろうな…芸が細かいぜ。


この祭り、これを三晩×10勝負以上 やります。

私たちは、一回の勝負のみで帰りました。
次の日も仕事があったしね~

帰るときもう一度お偉いさんに会って、握手をしたんですが、
皆の手が真っ赤ッかになっていて、
「ああ!綱引いたの!?」
と、驚かれました。

宿舎でも遅くまで祭りのお間抜けな歌声が聞こえました。

気になる総合判定では、
結局男性陣の勝ちだったらしいです。
でも女性もだいぶ好きなことが言えたんじゃないかな?
(男性陣のは悪口というより、負け犬の遠吠え?)

最後の日には、台車と木を燃やして、祭りは終ります。

そしてまた来年の祭を、皆たのしみに帰っていくわけです。

私も楽しみ。来年もあそこにいたいなあ。(ムリムリ)


(2004/7/14)


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